嘉門タツオさん(撮影・國府田英之)
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 一昨年9月に妻の鳥飼こづえさん(享年57)を亡くしたシンガー・ソングライターの嘉門タツオさん(65)。その後の取材では「妻が生きたことも亡くなったことも、ちゃんと意味を持たせたい」と涙ながらに話していたが、年が明けた2023年の1月に飲酒運転で逮捕され、活動を自粛するはめになった。猛省の日々を経て、この3月に活動を再開した嘉門さん。自ら“暗転”させてしまった死別その後の人生と、この今に何を思うのか。

【写真】仲むつまじい、嘉門タツオさんと生前のこづえさん

 嘉門さんとの交際前に、悪性脳腫瘍(しゅよう)を患っていたこづえさん。眼科とアンチエイジングの医師だったが、結婚後、病気の影響で右半身が徐々に不自由になり、医師の仕事をあきらめた。嘉門さんと一緒に曲作りをするようになり、ライブなど全国の仕事場に夫婦で連れ立つようになった。

死別からわずか2カ月

 妻であり、仕事のパートナーでもあり、息がぴったりの2人。だが2022年の春、こづえさんのがんが再発。嘉門さんは病状が悪化していくこづえさんを介護し、一時は自らが体調を崩して入院しながらも、最後は自宅で旅立ちを見送った。14年間の夫婦生活だった。

 嘉門さんに、こづえさんへの思いを取材したのは死別からわずか2カ月のころ。

 筆者は、嘉門さんより2年4カ月前に妻を悪性脳腫瘍で亡くしている。

 嘉門さんは取材中、18歳年下の筆者のことを何度か冗談めかして「先輩」と呼んだ。当事者同士で「死別後年齢」は筆者が上とあって、気持ちを吐き出しやすかったのかもしれない。 

 こづえさんと過ごした日々を振り返り、思いを言葉にしながら、何度も涙をぬぐった。 

「妻が生きたことも、亡くなったことも、ちゃんと意味を持たせたい思っています」 

 こづえさんとの日々を、何か形にしたいという誓いを口にしていた。

 だが……。 

 昨年1月の中旬、自宅の近所のすし屋で酒を飲み、車で帰宅途中に接触事故を起こして道路交通法違反(酒気帯び運転)の疑いで現行犯逮捕された。

 警察署に留置され、番号で呼ばれ、手錠をかけられてバスで検察庁へと移送された。 

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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