こづえさんが残した写真のなかに、嘉門さんが一人でその写真を見たときに、メッセージが伝わってくるものがあることに気が付いたという。 

 嘉門さんは、

「彼女は、人生のゴールを分かっていたんですよね。そんな女性だったからこそ、健康な夫婦よりも密度の濃い、かけがえのない14年間を過ごせたと思います。夫婦生活に悔いは一切ありません。僕にしかない経験と感情を、これからの歌に込めていくことができますから」

 と話し、こう続けた。

「彼女は、本当に格好良かったと思います」

 やってしまったことは、消せない。再始動を応援してくれるファンがいる一方で、もう嘉門さんの歌は聞きたくない、などという厳しい声があることも承知している。

「どうやったら人を笑顔にできるか、幸せにできるか。迷惑をかけてしまった人たちのためにも、今後の人生では自分の過ちを見つめながら、そのテーマを追求していきたいと思っています」

 65歳。大反省を続けながらの、人生のやり直し。

 これからの生き様を、天国のこづえさんも見ている。

(國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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