アンチ大谷?
大谷だけでなく水原も自らの携帯電話を提出するなど協力的だったことが、連邦当局の捜査を容易にした。
「一平がかなりのデジタルな証拠を残していたから、捜査は非常に早かった」
とブラム。そして続ける。
「有罪が確定するまでは、一平は罪を犯していないと見るべきだけど、現時点では、単純明快な事件だと思う。『賭けていたのは翔平で、一平は罪をかぶっただけ』なんていう陰謀説がいまだに出回っているけど、それはあり得ない」
罪状認否すら済んでいない時点で、水原が大谷やドジャースなどに謝罪したのも、アメリカでは異例である。罪を認めることになり、検察と司法取引を行う上でも、自らを不利な立場に追い込むからだ。
「アメリカ人だったら、この時点では黙っているのが当たり前。不利になるから」とヘルナンデス。
ブラムもヘルナンデスも、スキャンダル発覚当初から、「大谷が賭け事を行っていたとは思わない」「大谷の説明も合点がいく」と語っていた。大谷が野球以外のことに興味がない、と取材を通して感じていたからだ。
それでも、「水原がどうやって銀行口座から送金したのか」「なぜ誰も気付かなかったのか」など疑問は残っていたため、証拠が出てくるまでは断言はできないという姿勢だった。「アンチ大谷」なのでは、と思われるかもしれないが、それが真実を追求するジャーナリストのとるべき態度なのである。証拠がないうちから大谷を信じるというのは、ファンとして肩入れしているに過ぎない。
記者はファンではない
今回のスキャンダルの報道をめぐって、ヘルナンデスやブラムは熱心な大谷ファンからSNS上で非難を浴びた。『米番記者が見た大谷翔平』の発売も相まって、「大谷バッシングで話題を作って金儲けをしようとしている」とさえ批判された。しかし2人のこれまでの働きぶりを知る者として、普段通りの記者としての仕事を果たしただけだと断言できる。