「会いたい人に会いに行く」は、その名の通り、AERA編集部員が「会いたい人に会いに行く」企画。今週は異色のバスケ誌の初代編集長にバスケ大好き記者が会いに行きました。
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コアなバスケットボールファンに愛される書籍がある。2017年に創刊された「ダブドリ」。年3回の発行で、スポーツ誌らしからぬ遊び心にあふれた表紙写真が目印だ。選手がロールス・ロイスに腰掛けていたり、愛犬と一緒にドリブルしていたり。新婚の選手は夫婦そろってタキシードとドレス姿で紙吹雪が舞う中ほほえむ。結婚情報誌と見まがうほどだ。他誌にはない独特の切り口の表紙に目を奪われて手に取ってみれば、20ページを超える選手の超ロングインタビューが載っている。
数あるスポーツ誌の中で異色の輝きを放つが、創刊人の一人で初代編集長を務めた大柴壮平さん(42)は「先の厳しい出版界で生き残るために、そうせざるを得なかっただけ」と笑う。
「似たような作りのかっこいいものを作っても埋もれてしまう。切り口にしてもデザインにしても、他とは違うものをつくる。だから表紙で最も重要視するのは、選手のネームバリューより独特なデザイン案が湧きそうかどうか。もちろんその時その時でホットな選手から選んではいますが、独自のキャラクターを持っているかが大事でした」
タイトルは、バスケの反則の一つであるダブルドリブルから取った。バスケ経験者なら誰もがそう略す、親しみやすい響きだ。この決断も、かっこよさより「逆張り」精神こそが存在意義と自負しているからだ。
「ありがたいことに創刊してすぐに『変なバスケ本が出てきた』とSNSで話題になりました。うれしかったですね。ただ、今でこそ多くの方々に手に取ってもらえていますが、当初は、僕らでバスケ界を盛り上げようみたいな志があったわけでもなく、創刊前年に開幕したBリーグが大きくなれば本も売れていくだろうと、ただそれだけでした」
生家は都内で印刷所を営んでおり、大柴さんは跡取りでもある。ダブドリもその家業の印刷所で刷っている。編集部は印刷所内の小さな一室だ。4人座ればいっぱいの部屋にはパソコンや資料と一緒に、バスケットシューズとボールが並び、バスケ愛がにじみ出る。