
「危険でもギリギリを攻めることもある」
瀧川氏のケースのように、馬が突然故障したことが落馬の原因になることが多いが、他にも、騎手が強引に馬群に突っ込んでバランスを崩す場合や、競馬場側の設備問題が関係することもあるという。
「勝負の世界ですから、危険だと思ってもギリギリを攻めなければいけないこともあります。そこは、F1などと似ているかもしれません。やはり安全な騎乗ばかりしていると勝てないこともあります」
もうひとつ、設備の問題とはどのようなケースなのか。直近の事故の事例を紹介しよう。
23年11月19日の日没後、金沢競馬場でのレース中にコース内の照明が突然消えた。競馬場が暗闇に包まれた結果、3頭が落馬。1頭の馬が安楽死となり、2人の騎手が病院に運ばれた。騎手2人は命に別状はなかったが、ファンや馬主などからは「命に関わる問題だ」と批判の声が相次いだ。競馬場を管理する石川県競馬事業局が原因を確認したところ、レース終了後に消灯するはずのタイマーが、誤った時間に設定されていたという。
この設備問題は不可抗力だが、落馬事故を防ぐために騎手たちも普段から自助努力をしているという。
「昔も今も騎手は細心の注意を払って騎乗しています。もちろん、騎手同士で人間関係の良い悪いはあるものの、一緒に走る仲間でもあるので、レースでは声をかけあって事故が起こらないように徹底しています」