2023年の マイルCS で、 ナミュールに騎乗し優勝した藤岡康太騎手(写真:山根英一/アフロ)

騎手は「天職」だと思っている

 JRAの公式Youtubeチャンネルでは、騎手のヘルメットに設置された小型カメラから、騎乗中の様子をリアルに見ることができる。4月7日に公開された、2024年桜花賞(G1)で競走馬・イフェイオンに騎乗した西村淳也騎手の動画では、競走中に西村騎手が「内、まだいます」と声を出したり、時には大声で「います!」と叫んだりする様子が確認できる。

 また、競馬場には落馬率が高いコーナーの付近に救急車が設置されていることがある。競馬場の職員も、レースの様子を目視やラジオ、業務用無線などで把握しながら事故が起きても迅速に対応できるように準備をしているという。競馬場内の救護室には医師と看護師が1人以上常駐している。それでも、悲惨な事故が起こってしまうことはある。

「現役時代は、落馬したら骨折するのは当たり前という感覚でした。15回も落ちているので、途中からは覚悟していましたね。騎手の生活は体重管理が厳しく、好きなものも食べられない。八百長防止のため、レース開催中は第三者との接触も禁止されている。とても苦しかったですし、途中で辞めていく人もいました」

JRA通算800勝を達成したときの藤岡康太騎手(写真:山根英一/アフロ)

 しかし、それでも多くの騎手が馬に乗り続ける理由を瀧川氏はこう話す。

「やっぱり馬が好きで、この仕事が天職だと思っている人が多いからだと思います。僕は勉強も得意ではなく、これ(騎手という仕事)しかなかった。父子家庭で育ち、経済的にも苦しかったので、オヤジをなんとか楽をさせたいと考えて、中学校を卒業後に競馬学校へ進学しました。レースに勝てばそれなりのお金がもらえることも動機ですが、やっぱり皆、馬やレースが好きなんですよね。だからこそ、今回、2人の騎手が続けて落馬事故で亡くなってしまったことはとても悲しいです。2人とも人柄がよく、優しくて頼りがいがある人として有名でした。ファンの人たちには、命がけでレースに臨んでいる騎手たちをこれからもより一層応援してほしいと思っています」

(AERA dot.編集部・板垣聡旨)

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