だが先の滝口所長は、収支差率はあくまで「数字の上」だと批判する。「高い収益を上げているのは、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のように、訪問介護事業所を併設して入居者を効率よく訪問できる事業所に限られます」

 こうした一定の高齢者を囲い込んだ併設型では、ヘルパーは同じ建物内の入居者を巡回すればいいので、移動時間はほぼゼロ。効率的に報酬を取得できる。だが、東京ケアや地方のように、地域に根付いて利用者宅を一軒一軒、自転車や車で回る事業所の経営は決して楽ではない。それを一緒くたにすれば、当然利益率は押し上げられる。

 東京ケアでは、ヘルパーだけで対応できないので、本来ならヘルパーの業務管理などを担うサービス提供責任者も訪問介護の現場に出て何とか稼働できている状態、という。

「それで利益率が上がったと言われるのはおかしいです。基本報酬のマイナスは、訪問介護は利益を出して職場環境を改善したり、従業員にボーナスなどで還元してはいけないというメッセージにも受け取れます」(滝口所長)

(編集部・野村昌二)

AERA 2024年4月22日号より抜粋

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