AERA 2024年4月15日号より

「私としては心から『よかったね、ゆっくり休んでね』という気持ちなんですけど、『いいね』を押すことで『休日も上司に見られてる感』がして嫌かな、と思って躊躇(ちゅうちょ)してしまうんです」

事情が見えるがゆえに

 もともと「社交的なことが苦手」だという辻さん。年が近い社員も多いがそれでも「金曜夜に誘うのはよくないかな」「私に『ご飯行かない?』と言われたら断りづらいよね」など、距離感に悩むことは多いという。

「コミュニケーションは苦手だけど仲良くはなりたい、というアンビバレントなところは常にあって。年齢が近くてもこれなので、ジェネレーションギャップがあったらもっと大変だろうなと思います」

 社員を食事に誘うとなったとき、最も難しいと感じるのは「(その社員の)タイプによる」というところだという。

 たとえばデザイナーやエンジニアの社員などは、外で上司と飲食などで交流する時間があれば黙々と自身の制作の時間にあてたいタイプが多いように感じるし、一方で飲みに行って積極的にコミュニケーションを取ることを好むタイプの社員もいる。

「そういった個々の性格に加えて、その時々のその人の業務量(忙しさ)、居住エリアと会社との距離感、お子さんなど家族の有無など、それぞれのタイプや事情を鑑みて最適な距離感で各々に向き合いたい。その事情や特性が最も『引き』の目線で理解できているのはマネジメント側、つまり私です。だからこそ、この層から誘う難易度が高いんだと思います」

 本当は皆を誘ってご飯会などをやりたい。でも個々の性格上、来たいのは結果的にいつも同じメンバーという可能性もある。「タイプに合わせつつ、皆に等しく」がすごく難しいのだと、辻さんは言う。

「だから社員全員に対し等しく距離感を取る。社長は社員と基本的には食事などに行かず、何かのタイミングでの1オン1のランチなどに限る。私の周りの、とくに中小ベンチャー企業の経営者にはそう決めている人が多い気がします。さみしい!(笑)」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年4月15日号より抜粋

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