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 コロナ禍を経て、職場でのコミュニケーションは大きく変化した。リモートワークやハラスメントへの意識が浸透し、昔のように上司が部下を飲みに誘うことが難しくなっている。こうした中、サントリーのウェブCMが話題を集めている。AERA 2024年4月15日号より。

【アンケート結果】職場での「飲みニケーション」は必要?不要?

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「仲良くなっときたいし、飲みに行きたいが、そもそも後輩って飲みに誘っていいんだっけ?」

 後輩社員を飲みに誘うか否か。その悩ましさを、お笑い芸人の和田まんじゅうさん演じる先輩社員の目線で描いたサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」のウェブCMが話題になっている。

 疲れた様子の後輩を見て「飲みながら話でも聞く? いや待て、俺が原因って可能性もあるからなぁ……」などと悩みに悩むが、ついに後輩との乾杯にたどり着く──そんな光景をドラマ仕立てで描いた2分間のCM「飲みに誘うのムズすぎ問題」篇だ。

誘い方がわからない

 制作を担当したサントリー宣伝部の杉本雅介さん(38)は、きっかけとして「世の中における職場での上司と部下のコミュニケーションの難しさ」というテーマも頭にあったと話す。

「働き方にオンラインが導入されるなどの物理的な制約や、一般的にハラスメントに関する意識が高まっているという背景もあり、昔のように気軽に『よし飲みに行こう!』と上司が部下に声をかけにくいという話はよく耳にしていました。本当は『後輩や部下と仲良くなりたい』と思っていても、『誘い方がわからない』『僕とは飲みに行きたくないかも』など、さまざまな思いがあるはず。多くの働く人が『あるある』と感じるであろうエピソードを制作チームで出し合い、リアリティーのある話にすることを意識しました」

 その内容は共感を呼び、SNSにおける言及数は消費財平均の約3倍(X社調べ)で拡散につながったという。

 クリエイティブディレクターでarca代表の辻愛沙子さん(28)も共感した一人。CMを見てXに「語彙(ごい)力失うくらい、めっちゃ共感の嵐でやばい」と投稿した。

「同じく広告制作をしている作り手の目線からも『嫉妬するほど秀逸なCM』でしたが、それ以上に、上司あるいは経営者目線からの共感が強かったです」

 たとえば後輩がSNSに「しごおわ(仕事終わった)! 飲み募集~」と書いているのを見て、「でも後輩のSNS見てる先輩って、何かなあ」と反応するかどうか迷うシーン。辻さんも、社員が休日に行楽地などで楽しく過ごしている様子をSNSで見かけたとき、「いいね」を押すかを迷うことがあるという。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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