須山:インカレとかはあったんですけど、そこでは勝てなくて。稽古もあんまりできなかったし、もうちょっと相撲をやりたいなっていう、不完全燃焼感がありましたね。
大宮:へえ。相撲部屋にはどうアプローチするもんなんですか。
須山:たまたま、木瀬部屋の部屋付き親方の稲川親方の知り合いの方がいて。一度体験に行って、稽古もさせていただいて、入門しました。
大宮:今まで東大から、相撲界に入門した人っているんですか。
須山:いないですね。僕が初めてで。
大宮:みんなは就職してるでしょ?同級生が相撲部屋に行ったって、びっくりしてなかったですか。
須山:いや、「相撲部屋に行きたいんです」と話したら、相撲部の先輩は「いいじゃない、やりたいことあるならやったほうがいいよ」って。
大宮:むしろ、すごいじゃん、ですよね。憧れじゃないんです?
須山:実は、相撲界に入るのはそんな難しくないんです。身長、体重、年齢に制限があって、あとは健康診断をして、ある程度健康なら入れる。
大宮:ええっ!? ほんとに? 続けていくのが大変なんですね、きっと。
須山:そこから上がっていくのは、実力次第なんです。さっき言ったように、不完全燃焼感があるんで、限界まで強くなりたいですね。
大宮:目標はあるんですか。
須山:まあ一応、東大出身なんで、「東大関」を目指してます。
大宮:面白い!
大宮エリー(おおみや・えりー)/1975年、大阪府出身。99年、東京大学薬学部卒業。脚本家、演出家などを経て画家として活躍。瀬戸内国際芸術祭(岡山県・犬島)で「光と内省のフラワーベンチ」を展示。第80回ベネチア国際映画祭XR部門に、監督・脚本を務めたVR映画「周波数」がノミネートされた
須山(すやま)/1997年、埼玉県出身。慶應義塾大学を中退して、2018年に東京大学文科Ⅲ類に入学。大学5年目の22年4月、新弟子検査を受け、5月に合格した。23年3月、東大文学部哲学科卒業。大相撲史上初の東大出身力士。木瀬部屋所属。西三段目三十九枚目
※AERA 2023年11月13日号