日本でも安楽死が様々な形で頻繁に話題に上るようになった(写真:GettyImages)

 致死薬を使って命を絶つ「安楽死」。世界で初めて合法化したオランダをはじめヨーロッパを中心に広がっている。近年では隣国の韓国でも法改正に向けた議論が起こるなど動きを見せている。私たちは人生の最期をどう迎えるか──。AERA 2024年3月25日号より。

【写真】安楽死をしたオランダのドリス・ファン・アグト元首相と妻のユージェニーさん

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 オランダのドリス・ファン・アグト元首相と妻のユージェニーさんが2月5日、亡くなった。ともに93歳。肩を寄せあい、穏やかな表情でこちらを見ている夫婦の写真とともに伝えられたのは、2人そろっての安楽死だった。2人は大学の同級生として出会い、70年間連れ添ってきた。晩年まで仲の良い夫婦として知られていたという。

 オランダは2002年に、世界で初めて安楽死と医師による自殺ほう助を合法化した国だ。

「絶望的で耐え難い苦しみがある」「ほかに合理的な解決策がない」など六つの要件を満たせば、医師から薬や注射といった方法で、安楽死の処置を受けることができる。

 元首相のファン・アグト氏は、政治家時代は、人工中絶の合法化に反対するなど保守的な立場を貫いた。だが、19年に脳内出血で倒れて以降は、後遺症に悩まされ周囲に、

「人生と苦しみが耐えられなくなったら、安楽死も選択肢だ」

 と語るようになったという。最近になって、ユージェニーさんの体調も悪化したため、そろって安楽死の選択をしたと報じられている。

 オランダ自発的安楽死協会(NVVE)によると、合法化されて以降、国内で安楽死を選ぶ人は増加傾向にある。

 22年に確認された同国内の安楽死事例は計8720件。国内の死因の5.1%に当たる数字だ。ファン・アグト夫妻のように、カップルでの安楽死も20年13組、21年16組、22年29組と少しずつだが増えている。夫婦そろって要件を満たす必要があるため、そう簡単なことではないが「相手を看取る必要がなく、人生の最期の悲しみから守る」といった理由で、希望するカップルがいるという。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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