安楽死をしたオランダのドリス・ファン・アグト元首相(左)と妻のユージェニーさん。手をつないだまま亡くなったという(写真:ラドバウド大学HPから)

 致死薬を使って亡くなる安楽死は、ヨーロッパを中心に1980年代から合法化する動きが広まった。現在、オランダ以外にも、ベルギー、ルクセンブルク、コロンビア、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア(特別地域を除く)、スペイン、ポルトガルで合法化されている。また、医師による自殺ほう助のみを合法としているのは、スイス、オーストリア、米国のオレゴン州など10州がある。

SNSに「日本も安楽死を認めた方がいい」の声

 合法化に向けて動き出そうとしている国も多く、そのひとつ韓国では18年、延命医療を終了できる法律が施行され、22年には安楽死も認める法改正案を野党議員が発議している。反論が多く、審議は止まってはいるが、人生の最期の迎え方についての激しい議論が始まっている。

 安楽死は法律で認められると、どうなるのだろうか。

 それぞれの国や州で安楽死や医師による自殺ほう助が認められる要件は異なるものの、共通しているのは、安楽死する人が増え続けている点だ。

児玉真美(こだま・まみ)/1956年生まれ。京大文学部卒。日本ケアラー連盟代表理事。英語教員を経て著述家。著書に『〈反延命〉主義の時代|安楽死・透析中止・トリアージ』(共著)など多数(写真:本人提供)

 例えばカナダ。合法化されたのは16年と早くはなかったものの、わずか5年で安楽死の死者が4万人を突破し、全死者数の約3%を占めるまでになっているのだ。著書に『安楽死が合法の国で起こっていること』がある著述家の児玉真美さんは、

「安楽死の対象がどんどん拡大することをはじめ、『すべり坂』が様々な形で現実となっています」

 と警鐘を鳴らす。

「すべり坂」とは生命倫理学で使われる比喩で、一度踏み出したら、どんどん坂道を転がり落ちるように要件がなし崩しに緩和されてしまう現象のことだ。

「合法化した当初は、対象者を終末期の患者に限定し、耐えがたい苦しみを救済するための策だとされていたものが、次第に重度障がい者、認知症の人、知的発達や精神障害のある人へと対象が拡大されていく動きは、非常に危険だと感じます」(児玉さん)

 オランダでは、75歳以上に安楽死を認めようという法案が出されていて、安楽死と臓器移植医療が結びつき、安楽死直後に臓器を摘出することも現実に行われているという。

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも
次のページ