ただ愛工大名電と報徳学園はいきなり潰しあい、さらに同じゾーンには作新学院、大阪桐蔭など強豪校が多いことを考えると、勝ち上がるのは簡単ではないことも確かだ。そうなると別のゾーンで面白い存在として創志学園(岡山)を挙げたい。左の山口瑛太(新3年)、右の中野光琉(新3年)と左右の力のある投手を揃え、昨年秋の中国大会では4試合でわずか3失点という安定した戦いぶりを見せた。東海大相模を春夏合わせて4度の甲子園優勝に導いた門馬敬治監督らしく、守備も非常に堅い印象を受ける。また公式戦のチーム打率は.302と決して打線は強力ではないものの、足を使える選手は多く、走塁に対する意識も高い。新基準の金属バットになって、打ち勝つ野球が難しくなると見られるだけに、手堅い野球ができるというのは大きなアドバンテージとなりそうだ。
最後にもうひとつダークホースとして挙げたいのが中央学院(千葉)だ。関東・東京の6校目というギリギリでの選出となったものの、昨年秋の関東大会では前評判の高かった健大高崎を相手に終盤までリードするなど互角の戦いを演じている。投手は大型右腕の蔵並龍之介(新3年)、サイドスローの臼井夕馬(新3年)、ショートとしてプロも注目する颯佐心汰(新3年)と最速140キロを超える投手を3人揃え、継投のパターンも豊富だ。また攻撃面では昨年秋の公式戦13試合で42盗塁をマークしており、次の塁を狙う姿勢が徹底されている。チームを指揮する相馬幸樹監督もセンバツ出場は当落線上と見られながら、出場するつもりで準備してきたと話しており、甲子園初勝利から一気に上位進出もうかがえそうだ。
昨年初優勝を果たした山梨学院(山梨)もA評価をつけていたスポーツ紙はあったものの、そこまで圧倒的な評価を得ていたわけではなく、大会が進むにつれて力をつけていった印象が強い。それだけに今大会でもここで挙げた以外からも、そんなチームが出てくることを期待したい。(文・西尾典文)
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。