朝ドラ「ブギウギ」がいよいよ佳境だ。連載「私とブギウギ」から、思い出のハイライトをプレイバックする(2023年12月18日に配信した記事の再掲です。年齢、肩書は当時)。
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弟の六郎(黒崎煌代)を亡くしたスズ子(趣里)が歌った「大空の弟」は、不思議な歌だった。国への感謝を歌いながら、反戦歌に聞こえる。「いつも○○○部隊ー」というスズ子の声に泣けてきた。
舞台上で号泣し、立ち上がれないスズ子に作曲家の羽鳥(草彅剛)が指揮の手を止め、声をかけた。「福来君、しっかりしなさい」。「スズ子」でなく、「福来君」という表現に羽鳥の品の良さ、師弟関係の真っ当さがあふれ、良い朝ドラだなあと思う。
そこから一転、「ラッパと娘」。足を上げ、クルリと回るスズ子。歌でスズ子は、弟の死との折り合いをつける。歌を聞いた父・梅吉(柳葉敏郎)は、現実を受け入れる。歌とドラマの相乗効果で、「ブギウギ」は傑作朝ドラになるかも――。
と、思っていたのだが、暗雲が垂れ込めてきた。何かというと、小夜(富田望生)だ。「ブギウギ」始まって以来、初めて「ない、ない、ない」と思った。小夜が動かしていく展開がおかしすぎるし、富田さんの芝居も大袈裟すぎる。このままでは「反省会」が始まってしまうのでは?
というのは本気ではないが、にしても、だ。とにかくおかしな展開について説明する。
スズ子と楽団が名古屋でコンサートを開くところが始まりだ。コンサートを終え、旅館について支払いという展開になる。マネージャーの五木(村上新悟)が「今回の巡業からは、小夜っぺに金庫番をさせてますからね」といったところから、小夜劇場に。首からぶら下げたガマ口を開き、「ない、銭がないんだー」と騒ぎだす。カバンの中を点検しつつ、「ぜってー、落とすわけない、ぜってー、落とさない」と言う。そして「窃盗説」を唱える。
小夜は福島から来て、垢抜けない子だ。その証のように、ほっぺたを赤くしたメイクをさせられている。でも、周囲の状況をちゃんと読める子でもあるのだ。「大空の弟」を披露したコンサートから帰ると、屋台で梅吉が一人で飲んでいた。スズ子が「小夜ちゃんもおでん、食べてこか」と誘う。「あー、オレはいい。先、帰ります」と小夜は答える。父娘で話す場面だと、ちゃんとわかる子なのだ。