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 スズ子たちは神戸に向かい、汽車へ。小夜が席を見つけると、近くに愛助が座っている。大阪の実家に帰るそうだ。愛助が前の席の女の子に、持っていたふかし芋をあげたことがわかる。お腹が減ったとぐずったらくれたそうだ。ここまでで、愛助が優しいことの説明は終了。

 次に説明されるのが、彼の出自。車両を通る軍人が、「坊ちゃん、村山の坊ちゃんじゃないですか」と声をかける。軍人は愛助の母の名前を出し、「芸人さんを大勢、慰問に派遣していただいて、感謝している」と語る。軍人さんが「村山(吉本)興業と創業者と戦争について」をごく短く説明してくれる。その流れで愛助が御曹司ゆえの特別扱いを嫌う、ちゃんとしてる&いいヤツとわかる。いろんなことを、汽車の中で済ませるのだった。

「ブギウギ」NHK総合の初回放送は毎週月曜~土曜の8:00から。(C)NHK

 汽車で一番、ありえなかったのが小夜の話だ。なんと、お金が見つかったのだ、足袋の中から。「うん?」と言い、こはぜを外し、「あ、あった、あった、お金」と言う。って、絶対ないでしょう。だって足袋、脱ぐでしょ。お風呂の用意があると旅館の女将はしきりにすすめていたし、入らなかったにしても寝る時は脱ぐでしょ。そもそも違和感あるぞ、足袋の中のお金。と、見ていてハテナが止まらない。「ブギウギ」傑作朝ドラへの道、視界が一挙に不良になった。

 梅丸少女歌劇団の先輩・大和礼子(蒼井優)に始まり、スズ子は近い人を亡くしがちだ。母(水川あさみ)も弟も、そして愛助も吉本興業史から言えば長生きしない。だからこの後ずっと、小夜がスズ子に付き従う展開も予想される。となると、小夜が「ブギウギ」を傑作にするかどうかを決める? うーん、心配だ。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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