「我慢」せず、「喧嘩」もせず、「冷静」に伝えられたらもちろん素敵です。
でも、現実はなかなかそうは行きません。「100%我慢しない」なんてことはないでしょう。また「100%喧嘩しない」なんてこともないと思います。
現実は、50%我慢しながら、30%ムッとしながら、20%興奮しながら、自分の希望を言う、なんてことがよくあります。
「コンビニに行こう」という誘いを断るだけでも、「我慢」と「喧嘩」と「冷静」の割合は日々、揺れ動くと思います。「強く断りすぎた」とか「冷たく言いすぎた」とか「断るだけですごく疲れた」なんてことが起こります。
「いつもつきあってるから、今日はカンベン」「体調が悪いの」「さっき行ったから」などなど、いろんな言い方をしながら、「どれがベストか」「ベストがなければベターか」「ベターもなければ、ワーストを避けるために、どれがワースか」なんて試行錯誤を日々続けることが、「我慢」と「喧嘩」と「冷静」の適切な割合を見つける道だと思います。
そうやってこつこつと練習していけば、「相手はこう言ってほしいんだろうな」と感じた時にも、自分の本心を優先し、嫌な時に嫌と、過剰な心理的負担がないまま言いやすくなると思います。
その毎日の基礎練習の先に、大ボス上司との対決が待っていると思います。その時には、アイさんの「押せばなんとかなる人」という印象はずいぶん変わっていると僕は思います。
アイさん。その日に向かって、焦らず慌てず諦めず練習を続けるというのはどうでしょうか。
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