東大で優秀な研究者は京大などほかの大学に行ってしまうと聞いたことがあります。かつては養老孟司先生のようなおもしろい先生も東大にいましたが、いまはそういった先生はいなくなってきているのではないでしょうか。
ただ、東大でおもしろい仲間をつくるというのは、非常に価値があると思います。
東大には大きく二つのタイプの学生が入ってくると思います。一つは勉強漬けの子どもたちです。入学試験の問題が難しければ難しいほど、塾に通い詰めていたような人たちが入ってきます。こういう子どもたちは親や塾の先生に言われた通りの勉強をしてきたような子が多いです。
もう一つのタイプは、ゲーム感覚で点数を取ることを楽しんで、勉強してきたような子たちです。自分なりに勉強法を工夫して入ってきたような子たちです。オタクっぽく勉強している子たちがいて、発達障害の子も多かったりします。私も発達障害で東大に入った一人です。そういう子たちのほうが自分の好きなことを突き詰めて研究し、おもしろいことをやっています。
ちなみに、東大医学部にこういったおもしろい受験生が合格するのは難しくなりました。それは面接試験を導入したからです。オタクっぽい勉強をする子はコミュニケーションが苦手なことが多いです。これではすごい研究者も出てきませんし、ノーベル賞を取るような人も出てこないでしょう。
――東大に求められている期待も変わってきているのでしょうか。
ひと昔前の日本の社会であれば、上から言われたことをしっかりと、みっちりとやる「学校秀才」、「塾秀才」と言われるような人材が必要とされていたと思います。そういう人たちはまさに官僚や大企業の社員に向いていたと思いますし、東大からはそうした優秀な人材が多数輩出していました。
ただ、こういう人たちは言われたことをハイレベルでできるが、何か新しいものをつくりあげるのが苦手であることが多いです。