和田秀樹氏(本人提供)

 東大の合格発表(一般選抜)が3月10日に行われた。今年も「サクラ咲く」受験生もいれば、悔し涙をのむ受験生も。受験の最難関と言われる東大だが、合格することが必ずしも「成功」とは言えない現状がある。『受験は要領』のベストセラーがあり、「受験のカリスマ」とも呼ばれる精神科医の和田秀樹氏に話を聞いた。

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――「東大を目指すことの価値」はどこにあると思いますか。

 私が東大にいたときと比べてどのくらい良くなっているかわかりませんが、東大は「教育の良い大学」ではないでしょう。

 東大に入ることに価値はあると思います。東大に入るような子は情報処理能力が極めて高く、社会に出ても目を見張るような力を発揮します。しかし、東大を出ることに価値があるかというと、私は疑問に思っています。「東大に通う価値はない」とすら思っています。

 例えば、社会に出てうまくいっている人というのは「大学にはいかなかった」「授業はろくに受けなかった」という人が多いです。堀江貴文さん(ホリエモン)は東大中退です。東大に入れば、将来について期待される立場になりますが、そのための学びというのは東大の教育の外にあるということです。

 東大だからと言って優秀な先生がそろっているわけではありません。私は東大医学部出身ですが、医学部では教授を頂点とする絶対的なヒエラルキーがあり、上司(教授)のご機嫌をうかがいながら振る舞わないといけないような状況があります。

 このような状況ではいい研究ができるとは言えません。東大医学部からノーベル賞受賞者が出てこないのは、そういう背景があるのだと私は見ています。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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