来場者には、チラシや立て看板などでギャラリーストーカー行為への注意喚起をするとともに、そのような行為をした人物に対しては退場を求めたり、警察へ通報することを伝えている。1月にあった今年度の制作展では、警備員の見回り頻度を倍に増やしたという。
「来場者からの作品への真摯な批評、感想というのは非常に貴重であり、ありがたいと思っております。学生も作家としてそれを自覚して、大学もそれがあっての美術教育だと認識しています」(同)
その一方でギャラリーストーカー行為は、学生の社会や関係者との大切な接点を逆手にとった「非常に卑怯な行為」と大学は言う。
東京造形大も、卒業制作展の会場を警備員や教職員が定期的に見回り、学生に対してはギャラリーストーカー対策として、「作品に関係のない質問には答えないこと」「不審な人物と遭遇したり見かけたりした場合は、直ちにその場を離れ、近くの教職員に連絡すること」と伝えたという。
そのほか、女子美術大や多摩美術大、東京藝術大、日大芸術学部も、同様な対策をとっているという。
ようやく被害に光が
「女性作家が個展を開くと、『変なおじさん』が来る」
記者はそんな話を、30年ほど前からしばしば耳にしてきた。それが「ギャラリーストーカー」として認識されるようになったのは、ごく最近のことだ。
マキエさんは、悔しさを訴える。
「ギャラリーストーカーの被害についてSNSに投稿すると、男性から『無視すればいい』『気にするな』と返ってくることがあります。男性からすれば、その被害がさほど深刻なものととらえられてこなかった実情があります」
ギャラリーストーカーによる被害は深刻な一方、マキエさんのように当事者が声を上げることはまれだ。
「その場から逃げることもできず、声を上げにくい人間を狙ってくる彼らの行為は卑劣です。一度、その味をしめた彼らは、社会が声を上げなければ、行為をやめないでしょう」(マキエさん)
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)