美術大の展示会場では。若い作家へのハラスメント行為をする来場者が問題になっている=2020年2月、東京都内

 若い女性芸術家などに作品の展覧会場で話しかけ、食事やデートに誘ったり、性的な言葉をかけたりとハラスメント行為をする「ギャラリーストーカー」が問題になっている。作品の購入をにおわせ、会場を離れられない「弱み」に付け込むなどして、相手につきまとうという。芸術大では学生を守ろうと、会場での「警告」や警察との連携などの対策を始めている。

【写真】相次ぐ美大生へのハラスメント行為に、大学からの注意喚起のチラシはこちら

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「乳首を出さないことに、こだわりがあるんですか」

 セルフポートレートの作品を撮り続けている写真家マキエマキさんは8年前、東京・銀座で開いていたヌード作品の展覧会の会場で、50歳ほどの男性から話しかけられた。

 バストトップを出さない作品しか撮っていないと伝えると、男性はさらに聞いてきた。

「おしりは出していますけれど、おしりは大丈夫なんですか」

 マキエさんはこれまでも、作品を展示した場で「旦那さんとセックスしていますか」と聞かれたことがあった。周囲にほかの来場者がいるのに、「おしり」「おっぱい」「性器(実際はもっと卑わいな言葉)」「セックス」など、露骨な言葉を交えて話しかけられたこともあったという。
 

 そのような行為をする人は、多くが30~60代の男性で、特に50代前後が目立つ印象だが、見た目は「ごく普通の人」ばかり。作品を見に来た来場者の中から、「この人」と見分けることは困難だ。

「いかにも『いやらしい感じのおじさん』ではなくて、なかにはすごく好感の持てるような方もいます」

 そしてマキエさんは、明らかに女性に向かって性的な言葉を吐きつけたいだけの人だと判断した場合、「不快ですよ」とはっきり伝えて会話を打ち切っているという。

「でも、社会経験の浅い、若い女性作家さんだと、笑顔を引きつらせながら30分も固まっている状態だったりします」
 

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「離れる」「逃げる」が難しい作家