アーティストや研究者でつくる「表現の現場調査団」が、2020年12月~21年1月に芸術家らを対象に実施したアンケートによると、ハラスメント行為の被害を経験したことがある人は、回答者1449人の約8割にのぼった。
被害者を年齢別に見ると、若い世代ほど多く、そのなかで20代の女性では7割超が被害を受けていた。そして被害者全体の約9割が「しばらく時間がたってから、それがハラスメントに当たる行為だったと気づいた経験がある」と答えていた。
同調査団がまとめた「『表現の現場』ハラスメント白書2021」には、こう書かれている。
<アート分野の自由記述欄には、ギャラリーストーカーの被害体験の報告が非常に多かった。ギャラリーストーカーがストレスであるために展覧会や表現活動を控えるケースも見られる>
美術大学は対策を強化
芸術家をめざす若者らが通う美術大学では近年、ギャラリーストーカー対策を強化している。
武蔵野美術大では21年度の卒業・修了制作展で、来場者が学生につきまといを繰り返す事案が発生し、それ以降、ギャラリーストーカー行為に厳しい目を向けるようになった。
同大教務チームによると、確認されたケースで最も多いのは「長時間にわたって一方的に話しかける」行為。さらに「執拗に個人情報を聞き出す」「プライベートに会うことを誘う」「卑猥な言動」「盗撮」「写真撮影の強要」「作品に対して高圧的に批評する」などだ。
「ひどい場合は警告書を手渡したり、そのような行為を2度と行わない旨の誓約書を書かせたりします」
と、同チームの担当者は言う。地元警察に相談し、悪質なギャラリーストーカーが現れた際の連携の流れも整えているという。
さらに同大は、卒業・修了制作展に向けた教職員用の「不審者対応マニュアル」と、学生用の「安全の確保と通報のマニュアル」を作った。