不調の程度には個人差があるが、日常生活に支障をきたし、やりたいことを諦めざるを得ないケースも少なくない(撮影/写真映像部・上田泰世)

 女性の健康は、女性ホルモンと切り離せない。思春期、性成熟期、更年期、老年期とライフステージごとに健康課題が生じる。毎日が過ごしやすくなる方法を取材した。AERA 2024年3月11日号より。

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 東日本に住む女性は39歳の時、子どもへの授乳をやめた。以降、イライラが止まらなくなった。ささいなことで夫や子どもに怒り、そのあと落ち込む。体が重だるく、熟睡できない。頭痛やめまいもあり脳外科で検査を受けたが、異常なしだった。

 婦人科を受診したのは、年上のママ友から更年期の話を聞いたからだ。月経はまだあり、まさかと思ったが、婦人科での血液検査で、更年期症状と言われた。ホルモン補充療法で不調が嘘のように消えた。イライラしても、治療前とは質が違う。「ママ、イライラ期が来ちゃった」と家族に言えるようになった。夫婦どちらも医療従事者。更年期症状の知識はあったが、自分ごととして捉えていなかったと話す。

「今年のテーマは『一緒に踏み出そう』です」

 こう言うのは、フェムテック・フェムケア企業が一堂に会する「Femtech Tokyo」の発案者で事務局長の下田アトムさん。10月に東京ビッグサイトで開催される同イベントは2022年から始まった。

 フェムテック・フェムケアは、女性特有の健康課題に対する製品やサービスを指す造語。日本では20年がフェムテック元年と言われ、市場規模は右肩上がりだ。矢野経済研究所は23年の市場を前年比107%の743億9100万円の見込みと発表している。

途中下車しておう吐

「Femtech Tokyo」が目指すゴールは、フェムテック・フェムケア関連製品を広く世に広め、女性の健康と活躍を社会全体がサポートする世界の実現に貢献すること。それから逆算し、第1回ではフェムテックの周知、第2回では「広げようフェムテック」というテーマのもと、SNSでの発信や参加型の企画などを実行。しかし、フェムテック・フェムケアの認知度は高まりつつあるも、まだ自身の生活に取り入れたり、企業の福利厚生としての導入がなかなか進まない。そこで第3回となる今年は、そんな一歩を踏み出せていない人たちの背中を押せる企画を練っている。

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