編著に『変わろうとする組織 変わりゆく働く女性たち』がある静岡県立大学の国保祥子准教授(経営学)は、多くの働く女性たちと向き合う中で、最近の変化をこう指摘する。
「働く上で何かを犠牲にしたり、捨てたりしたくないという意識が強い人が確実に増えていると感じます。私自身も小学生の娘を育てながら働いていますが、バリキャリだと自認していません。どっちもやりたいですから。たぶんいい意味で欲張りなんでしょうね」
就業率は過去最高に
キャリア最優先の「バリキャリ」でもなく、私生活重視の「ゆるキャリ」でもない。仕事にもプライベートにも同じ熱量で向き合う新しい価値観がいま、働く女性たちに広がっている。
その要因として、まず考えられるのが、働く女性が増え、価値観が多様化した影響だ。
内閣府の「男女共同参画白書」によると、15~64歳の女性の就業率は上昇を続けていて、2022年は72.4%。そのうち25~44歳においては79.8%でいずれも過去最高を更新している。
「働き続けることが以前よりも容易になっています。人材不足の時代であり、企業側の『働いてくれる人は働いてほしい』という姿勢が追い風になっていることに加え、産育休などの制度が充実したことも大きい。以前は女性が仕事を続けるにはかなりの覚悟が必要でしたが、今はもっと軽やかです」(国保准教授)
「男性化」正解ではない
その軽やかさと向き合ってきた愛知県内の住宅メーカーで働く女性(45)は、こう話す。
「7年前に管理職になって以来、常に部下のうち数人は子育て中の女性です。みんな育休を経て普通に戻ってきました」
女性は当初、彼女たちの仕事を減らしてあげたほうがいいと思い、他の独身の部下に割り振ったり、女性自身が代わりにやったりしていたという。だが、子どもがいない人や男性の負担が増すばかりでチームがギスギスしてしまった。
「疲れましたね。ある時、面談で、彼女たちが仕事を減らすことを望んでいないことがわかりました。『え? そうなの?』と聞き返した記憶があります。ただ、早退や欠勤は柔軟に認めてほしいとも言われ、ワガママだと感じて、一瞬ムッとしたのが正直なところです」
と振り返ってから、女性は、