でも、同じぐらいあるのは、「AとBのプラスとマイナスがほとんど同じ」です。この場合は、AとB、どっちを選んでも納得と後悔が同時に起こります。その場合は、僕は「サイコロとか勢いで選ぶ」なんてことにしています。
もちろん、決断するまでの「プラスとマイナス」の分析は、大切にしています。じっくり考えて、もうこれ以上は分からない、というところまでは「プラスとマイナス」を追究します。で、「プラスとマイナス」を比較して、自分としては充分考えたと思ったら、あとは、ポンッと選びます。
ウジウジしたり、後悔し続けたり、反省し続けたりするのは、時間がもったいないと思ってしまうのです。
暗い気持ちで毎日を過ごすより、未来を計画した方が何倍も素敵だし、元気が出ると感じるからです。
さて、次の質問ですね。
2.演出家、劇作家としての鴻上尚史と、1人の人間としての鴻上尚史に違いはあるのか。
どうですかね。演出家、劇作家は仕事ですからね。仕事をしている時の僕と、仕事以外の時の僕は違うとは思いますね。でもまあ、演出家なんてのは、毎日の時間のほとんどを丸ごと俳優さんやスタッフと交わるものですから、仕事とプライベートは、なかなか線引きが難しいと思います。
一人でホッとしながら家にいても、「相談があります」なんてLINEや電話が来ることがありますからね。そうなったら、瞬間的にプライベート鴻上から演出家の鴻上に変わります。
それは、苦痛とか大変というより、そういうものだと思ってここまできました。演出家になった22歳の時から、もうずっと続いている生活ですね。
3.今まで生きていて面白かった出来事はなにか。
それはもうたくさんあります。というか、面白い出来事を作るために、生きていると言ってもいいですね。
例えば、芝居の初日の幕が開き、お客さんの熱烈な拍手とか、俳優のスーパーな演技を見ると、頭の後ろの部分がジーンッとしびれます。日常の生活ではなかなか体験できない感覚です。その瞬間を味わいたくて、がんばっている、ということはありますね。
あと、僕は旅行が好きで、初めて一人旅をしたのは、中学3年の夏休みでした。国内海外含めて、いろんな場所に行き、いろんな人に会うのもとても面白い出来事ですね。