本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

 今まで生きてきて一番迷った決断はなにか。演出家、劇作家としての鴻上尚史と、1人の人間としての鴻上尚史に違いはあるのか。今まで生きていて面白かった出来事はなにか。今まで生きていて勇気を出した事はなにか。芝居の世界とはどういう空気感なのか。虚しさを感じた事はなにか。題材に抗うような質問で申し訳ないですが、教えてほしいです。私の人生のアイディアにしたいです。

 私は自分の悩みの答えを、生きていきながら見つけていこうと思っています。毎日辛いけど、それと同時に自分の心の痛みを愛しています。人生は修羅場であると同時に、この世に生まれた偶然を生きようと思っています。

【鴻上さんの答え】
 歩くだけさん。メールどうもありがとう。13歳なんですね。いろいろと大変でしょうが、未来の時間があるということは素晴らしいことだと思いますよ。

 と言われても、真っ最中だと、余計なお世話って感じなんですよね。僕自身、自分が一番不安定だったのは、中学2年でした。その当時の写真を見ると、睨んでいるというか怒っているというか、「世界と戦っている」みたいな顔をしています(笑)。

 大人とは絶対に理解し合えない、なんて思ってましたね。

 さて、歩くだけさんの質問に順番に答えますね。

 1.今まで生きてきて一番迷った決断はなにか。

 うーん。一番と決めるのは難しいような気がします。その時、その時、必死ですから、その時は一番なんですね。

 それと、僕はある時から「悩むことと考える」ことを分けるようにしました。「悩む」だけだと、「困ったなー」「どーしよー」と何時間もダラダラと過ぎていきますが、やるべきことが浮かびません。でも、一時間でも「考える」と、とりあえず、やってみることが浮かびます。結果的に間違っているかもしれませんが、やってみれば、また、次に「考える」ことが浮かぶのです。

 そうやって「悩む」のではなく「考える」ことを大切にしています。

 で、「考える」と、どの決断を選んでも、「プラスとマイナス」があると分かることが多いです。「Aを選ぶとプラス100、Bはマイナス100」なんてはっきりしていることはほとんどないですね。

 よくあるのは、「Aはプラス55、Bはプラス45」なんて微妙に分かれる場合で、この場合は、「プラスが多い」と感じる方を選びます。

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