鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)

 中学2年生からの6つの質問に答えた鴻上尚史さん。小学生で不登校になり、その時は「本当に死のうと思うくらい辛かった」という相談者が「人生のアイディアにしたい」と鴻上さんに投げた問いと、その答えとは。

【相談213】鴻上さんが今まで生きてきて一番迷った決断はなにか、教えてほしいです(13歳 女性 歩くだけ)

 私は生命として誕生してから、10年そこらしか経っていません。だけど悩みは絶えることなく現れ続けています。まだ長く続くであろう人生の中で、どうやって生きていこうかと、混乱して泣く時もあります。そんな絶え間ない修羅の渦の中で生きていこうと思っています。

 私は現在中学2年生、不登校です。不登校になり始めたのは小学5、6年からで、あの時は本当に死のうと思うくらい辛かったです。親ともすれ違い、先生、クラスメイト達の視線や、色々なものが自分に絡みついて、そこから動けないような停滞した辛さでした。だけど台風が来てもいずれ過ぎ去るように、時間も同じように流れ、あれから2、3年過ぎた今ではフリースクールに通うという自分の選択を見つけて、それなりに生活できています。それでも辛さには変わりありません。

 話がすごく飛躍しますが、鴻上さんの存在を視覚的に初めて知ったのはドラマ「TRICK」でした。黒津次男役で登場していたのを見ました。妙なイントネーションと、不気味な雰囲気でドラマの奇妙なユーモアに拍車をかける役柄で、印象に残っていました。次に鴻上さんの書いた本を読みました。それに加えて、母が『ほがらか人生相談』を愛読しているようで私も読みました(ほがらか相談シリーズ全巻持ってます)。この本でも衝撃を受けました。読者からの相談に鴻上尚史が回答する。異なる視点からの考えで、今までに体感したことのない形式の本で、面白かったです。

 でも、その時は著者の鴻上尚史が「TRICK」に出てきた、あの人間だとは思いませんでした。もっと鴻上さんの事を知りたくなったので検索したところ、画面に表示された顔に見覚えがあると思ったんです。それが鴻上さんを正確に認識した瞬間でした。それに鴻上さんの出身地に住んでいるので妙な親近感を感じました。

 なので唐突に鴻上さんに聞きたいのです。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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相談者から鴻上尚史さんへの6つの質問とは