Getty images
この記事の写真をすべて見る

 ニュース・情報サイト「AERA dot. 」は、3月8日の国際女性デーに合わせて、女性の生き方を考える特別特集企画を実施します。3月1日から10日までの10日間です。

 サイトカラーを国際女性デーのシンボルのミモザの花と同色に染め、日替わりで女性を取り巻く現状と課題をレポートした記事を配信します。例えば、フリーアナウンサーの宇賀なつみさんやpecoさんといった20代、30代を代表する女性著名人のインタビュー記事に加え、Z世代の女性のエッセイ投稿サイト「ががみよががみ」とコラボレーションし、「ニュースとわたし」をテーマに読者から募集したエッセイも掲載。変化の激しい今の時代に「自分らしい人生」を歩むためのヒントが詰まっています。

 さらに、「AERA dot.」、ニュース週刊誌「AERA」、子育て情報メディアの「AERA with Kids」と3メディア共同でトーク番組をSNSでライブ配信します。3月5日からの4日間連続で行い、それぞれのSNSアカウントで視聴できます。

AERA dot.が国際女性デーに注目する理由

 こうした取り組みは、AERA dot.においては今回が初めてです。ニュース媒体としての使命を果たすことは大前提として、これから特にどの分野に注力してくのか。社会課題の一つとして、組織や社会のコミュニティーで核となる女性、つまり女性のリーダーの少なさに着目しました。今後は、メディアの活動を通して、働く女性とともに、新しい時代のリーダー像をつくっていく。そこに注力していく考えです。今回はその一環として、特別企画を実施しました。

Getty Images

なぜ今さら?女性リーダーはバージョンアップの時期に来ている

 では、なぜ、女性リーダーという社会課題に注力するのか。編集長の鎌田から説明します。朝日新聞出版は、ニュース週刊誌「AERA」を中心にかねて女性の視点を取り入れた誌面作りを行ってきました。そのAERAで初めての女性編集長が就任したのが2014年。それから10年余りが経過しました。当時から女性の社会的地位向上が一つのテーマでしたが、掲げる女性像も社会の変化とともに変わっていくべきです。

 では、今、どのような女性像を掲げるべきなのか。働き方や会社組織の在り方も多様化し、ロールモデルがいない時代です。ならば、新しい女性リーダー像を一緒につくる、そんなスタンスで、女性が共感できる課題や悩みをすくい上げてあるべきリーダーの姿を模索しならが、発信していけばいいのではないか。それこそがAERA dot.の使命の一つと考えました。

日本社会は女性リーダーの不在に悩んでいる

「Sustainable Development Goals( SDGs)」、「持続可能な開発目標」と呼ぶ、国際社会共通の目標は17個ありますが、日本において最重要課題とされるテーマの一つは「ジェンダー平等」です。日本のジェンダーギャップ指数は先進国の最低ランク。特に、経済、政治の分野で遅れています。これは日本社会において「女性リーダー」の不在を意味しており、企業も他人事ではいられません。

 この10年の間に女性の管理職登用は増えました。しかし、重要な意思決定に携わる地位、つまり経営層となると、女性はまだごく少数です。弊社を例にとると、管理職の女性の割合は50%を超えていますが、経営層に女性メンバーはいません。日本の組織はどこも似たり寄ったりの状況ではないでしょうか。

Getty Images

「ガラスの天井」ではなく「壊れた横木」

 女性活躍の障壁を昔は「ガラスの天井」と表現しました。今はそれは少しずれた認識とされています。キャリアの最後に見えない障壁があるのではなく、スタート時から大小さまざまな障害がある、キャリアの階段を上るときに梯子のところどころ壊れているため、足を踏み外し、うまく登れない、「壊れた横木」が正確な認識だとされています。

 例えば、妊娠・出産に伴う制度は整ったものの、日々の生活で家庭のことを多く背負うのは女性で、パートナーの海外転勤などでキャリアを中断したり、諦めたりするケースも珍しくありません。さらには、社会に出る前からバイアスがあり、男性より女性は自分の能力を過小評価する傾向があるという研究結果もあり、女性自身が積極的になれず、それも一定以上の地位に女性が少ない要因の一つといわれています。

「私の選択は正しかったのか」後輩たちに示せるもの

 上記のことは私自身の経験からも言えることです。編集長という立場から「上り詰めたね」と言われることがありますが、それは二つの意味で正しくはありません。

「ガラスの天井」にぶち当たったハイキャリア女性たちのように野心があったかというと、そうではなく、今よりいい仕事がしたい、成長したいと思い続けてチャンスがあっただけにすぎません。そして壊れた横木は私にも存在しました。キャリアを形成する過程で、妊娠・出産・育児・介護など環境変化のタイミングで戦線離脱する先輩、同僚、友人が身近にたくさんいました。それを見て私は無意識に先送りしたり、意識的に選択しなかったり。つまり結果として「身軽」だったから、壊れた横木でも登れてきたのです。

 私の選択は正しかったのでしょうか。少なくとも後輩たちのロールモデルにはならないだろうと自覚しています。だからこそ、次世代を担う女性たちとともに、人生と仕事を見つめなおし、現在キャリアの先を誰もがチャレンジできる社会を作っていきたいと考えています。

Getty Images

立場を超えて連帯して模索を続けるメディアに

  社会のコミュニティーにおいて核となる女性はいったいどんな人なのか。バリキャリでしょうか、ゆるキャリでしょうか、ワーママでしょうか。いずれも、サイズの合わない服を着たときのようにいまの女性の心にフィットしない気がします。無理に背伸びするのでもなく、かといって必要以上に卑下するのでもなく、「なりたい自分」になるために、いま何か必要なのか。読者とともに考え、模索してきたいと思います。

 今回の国際女性デーの特別特集企画は、20代から40代の女性編集者、記者、営業担当がコンテンツづくりやサイト運営に携わりました。今後も立場を超えて連帯し、メディアの活動を続けていくつもりです。(AERA dot. 編集長 鎌田倫子)