2004年ドラフトの自由枠で中日入りした樋口龍美(OP写真通信社)

 プロ野球のオープン戦も本格化し、各球団の新戦力が気になる時期となってきた。即戦力が期待されるルーキーは大学生と社会人が中心となるが、社会人の場合は25歳を過ぎるとドラフト指名の可能性が一気に低くなるのも現実である。それでも20代後半になってプロ入りするオールドルーキーも確かに存在しているものの、果たしてどの程度の成功例があるのだろうか。2000年以降にドラフト指名を受けた選手を対象にピックアップしてみたいと思う。

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 まず投手で最も成功した例と言えるのが摂津正(JR東日本東北→2008年ソフトバンクドラフト5位)だ。秋田経法大付(現・ノースアジア大明桜)時代から評判の投手で、3年春には選抜高校野球にも出場。社会人でも長く主戦として活躍していたものの、スピードの無さが敬遠されてプロ入りしたのは8年目の26歳の時で、順位も下位指名と決して評価は高くなかった。

 しかしプロでリリーフを任されると、アマチュア時代と比べて明らかにスピードアップを果たし、セットアッパーとして大活躍を見せる。3年目から先発に転向すると、そこから5年連続で二桁勝利をマークし、2012年には17勝で最多勝のタイトルも獲得した。8年目の2016年から急激に成績を落とし、2018年限りで引退したものの、10年間で79勝49敗1セーブ73ホールドという成績を残しており、チームの黄金時代を支える存在だったことは間違いないだろう。

 投手で摂津に次ぐ存在と言えるのが武田勝(シダックス→2005年日本ハム大学生・社会人ドラフト4巡目)だろう。ドラフト指名を受けた時点で27歳となっていたが、1年目からリリーフとして結果を残すと2年目の途中から本格的に先発に転向。4年目の2009年からは4年連続で二桁勝利をマークするなどチームの左のエースとなったのだ。

 ストレートは130キロ台前半が多かったものの、独特のフォームでボールの出所を隠し、あらゆる球種を同じ腕の振りで操る投球術でパ・リーグの強打者たちを抑え込んだ。11年間の現役生活で通算82勝も見事だが、通算防御率3.02という数字に安定感がよく表れている。今年からファームに新規参入したオイシックス新潟アルビレックスBCの投手コーチに就任しているが、指導者として第二、第三の武田勝を輩出してくれることを期待したい。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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野手の「オールドルーキー」は成功例が少ない?