高齢者は受け入れ可能なのに

 医療の進歩により、医療的ケアが必要な子どもはこの10年間で2倍に増え、全国に2万人以上いるとされています(厚生労働省,2021)。

 社会情勢が変わり共働き世帯が増えている中で、公的な支援を求める家庭は我が家だけではありません。本来は高度医療が必要な子どもほど支援が必要なはずですが、人工呼吸器を着けた子どもの受け入れ先は極端に少なく、自宅から車で1時間以上離れた大学病院やこども病院への送迎が必要というケースもたくさんあります。

 また、現在大きな課題となっているのが、「18歳の壁」と言われる特別支援学校卒業後の受け入れ先の少なさです。人工呼吸器は基本的には大人も子どもも同じ機械を使用していますが、レスパイト入院においても、介護保険が適用される高齢者は受け入れが可能なのに、小児科から移行したばかりの重症心身障害者は受け入れ不可という施設も多いのです。

 おそらく、この背景には10~20年まではほぼいなかった医療的ケア児が急増し、18歳を超えて生きることができるようになり、小児病棟では医療的ケア児は珍しくなくなったものの、成人領域ではまだ小児科から移行した患者の受け入れ経験がない病院や施設が多いためだと思われます。

 子どもが大きくなるにつれ保護者も年齢を重ねます。長年介護を支援してくれていた祖父母もいつか頼れなくなる時期が来てしまい、在宅医療を担う家族を支える仕組みがないと介護のマンパワーは確実に減ります。まずは、人工呼吸器を使用する子どもを育てるパパやママが確実に眠ることができる環境から整備されていくことを強く願っています。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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