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 人手不足の解消や業務の省力化を目的に、スーパーやコンビニでセルフレジの導入が進んでいる。歓迎する人が一方、イライラする人も少なくない。セルフレジ化の普及を社会学者はどう見るのか。AERA 2024年2月26日号より。

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 なぜ、セルフレジが客の「イライラ」を呼んでしまうのか。筑波大学教授で社会学者の加島卓(かしまたかし)さん(48)は、「人間と人間のやりとりで時間がかかっているときより、人間と機械のやりとりで時間がかかっているときの方がイライラしてしまうのは興味深い点だ」と話す。

「たとえば高校生が研修で有人レジに入っていると、もたもたしていても大人として『がんばって』と優しくなれたりする。でもセルフレジやATMだと、てこずっている人に対して『ノロノロするな』と一方的にイライラしてしまう。セルフサービス社会が進むと、自己責任原則が強くなるのだと思います」

 本来はセルフサービスではない方がユーザー同士は寛容になれる。

「セルフレジ化が進むこの社会はおそらく、ユーザーと店員、あるいはユーザーとメーカーの『バランス』が変わってきた結果なのかもしれません。これまで責任を取るのはすべてメーカーや店員側だったけど、ユーザーにも責任を取らせるようになったから、ユーザーに対してイライラするのだと思います」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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