AERA 2024年2月26日号より

買い物に努力は必要?

 加島さんも、セルフレジは高齢者や障害のある人たちが積極的に「使いたい」と思える状況にはないだろうと話す。

「社会学ではある事象に対して『マジョリティーとマイノリティーの差』に注目していくことが多いのですが、セルフレジはその部分が目立つテクノロジーだと思います。セルフサービス化で便利にすることは否定しません。ただ『その便利は誰のための便利なのか』を問うていくのは、『技術者ではないユーザー』にとって大事なことです」

 技術者は「先端的なユーザーになった方が便利だよ」と言うかもしれない。しかし、先端的なユーザーであり続けるには経済力や体力などさまざまな「努力」が必要で、そんなことを常にやっていたい人は実は多くないのではないか。買い物とは楽しくあるべきだし、そもそもそんな努力を求められる場所でしたっけ?と加島さんは問いかける。

「さっと買い物を済ませたい人もいれば、ゆっくりしたい人もいる。セルフレジ以外の選択肢もある、『複数の速度』に寛容な場所であってほしいと思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年2月26日号より抜粋

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