ほかの力士にはしないようなことで、すごく目をかけてくれていたのがわかったよ。親方も俺に期待をしていろいろと稽古をつけてくれたし、親方から俺のことをいろいろ聞いていて、余計によくしてくれたんだと思う。

 でも、そんな女将さんとの関係は、大麒麟が謀反を起こした「押尾川騒動」で一気に切れちゃった。女将さんに恨みはないし、本来なら俺を育ててくれた二所ノ関部屋に恩義があるはずなのに、部屋を継ぐときの金剛の言動で義憤に駆られてね。

 最後に女将さんに部屋に残ってくれと言われたときも「女将さん、話はそれだけですか」ってずいぶんテンパったことを言ってしまったよ。今になってやっぱりお世話になった女将さんのもとに残るべきだったと思う。あの頃は自惚れて、意固地になって、正義感を出しちゃって、新選組みたいな気持ちだったなあ。

 そうやって女将さんとの関係もぷっつり切れてしまったけど、プロレスに転向してなかなか芽が出ない時期に、シンガポールに遠征した帰りの飛行機でばったり女将さんに会ったんだ。「お久しぶりです」って声をかけたら「嶋田君、久しぶりね」って、なんのわだかまりもなく話をしてくれた。

 どっちからどうということもなく3時間くらい話し込んだよ。「あのときは生意気なことを言ってすみませんでした」って謝ったら、女将さんも女将さんで「最後に偉そうなこと言って、あの頃はテンパっていたわよね」って(笑)。プロレスに転向して一年くらいの頃で、全然上手くいかなくて、身の程を知ったときだったから、以前と変わらず接してくれた女将さんにはずいぶん救われた思いがしたよ。

ジャイアント馬場さんの妻・元子さん

 プロレスに転向してから出会ったすごい女性といえば、やっぱりジャイアント馬場さんの奥さん、元子さんだ。元子さんはいい評判も悪い評判もあるけど、ジャイアント馬場をジャイアント馬場たらしめんとするために、自分が矢面に立って守っていた人だ。

 馬場さんを守るために最前線に立って憎まれ役をやっていた。俺も全日本プロレス時代は、元子さんに何か聞いたり、意見したりしても「そんなことはいいの。あなたたちは知らなくても」って感じで。天龍革命のときに本体のバスとは別で移動していたから「レンタカー代を会社で出してくれ」って頼んだら「レンタカーを借りるのに、チケットを何枚売らなきゃいけないと思ってるよ!」って突っぱねられて、頭に来たこともあった。

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憎まれ役に徹する元子さん