1月30日、閣議後に会見する上川陽子外相
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は麻生太郎氏の発言と女性が向き合ってきた差別について。

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 現職の外務大臣を「おばさん」とか「美しい方とは言わないが、仕事はできる」といった暴言を吐いた麻生太郎さんで思い出したのは、2017年の稲田朋美防衛大臣(当時)だった。稲田さん、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、同じ壇上にいたオーストラリアとフランスの国防担当大臣(女性)に触れて、「私たち3人には共通点がある。性別と世代が同じで、全員グッドルッキングです」って仰っていた。「私たちは美人♡」または「彼女は不美人だが仕事はできる(笑)」が、誰も傷つけない愛嬌のあるジョークとして通用する世界が、自民党なんですね。

……とはいえこれって、自民党だけの話じゃないところが根深い問題である。いったい日本社会で、“女の価値=見た目”な価値観に全く無関係で生きてこられている女など、どれくらいいるのだろう。「女性を見た目で差別しません!」「女性を見た目で選びません!」と正々堂々としていられる組織ってどのくらいあるのだろう。

 今回、上川陽子外務大臣は「どんな声もありがたく受けとめている」と言ったうえで、「国民に理解され、支持される外交を展開していくことに専心している(後略)」という発言をした。そこで今度は麻生発言を直接批判しなかった上川さんへの批判の声が大きくなった。野党からは、蓮舫さんが「毅然と『おかしい』と指摘することこそ大人の対応です」とSNSに投稿し、辻元清美さんも「ふんばっている女性たちのためにも、言うべきことは言う姿勢を」と上川さんを批判した。本当にその通りと思うし、辻元さんも蓮舫さんも身内の男性にも堂々と反論できる人なのだろうと信じたいと思うが、それでも女性の美醜や年齢に関していえば、与野党限らず、政治業界こそ、そこに囚われているのではないかと思わずにはいられない。最近の選挙ポスターでは、「美しいこと」もまるで才能の一つのように、女性候補者も男性候補者も、キラリと白い歯を見せる。まるで見た目や年齢も候補者の条件のうちのようである。政治家としての力量に期待するならば、専門性と深い経験が求められるべきであり、整った顔より深い皺一つあったほうが信頼できるはずなのに。

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