AERA 2024年2月12日号

 自身も企業の管理職だった濱田さん。上司たちの「苦労」には同情しつつ、「難しい時代だから叱らなくていい? そんなわけにはいきません」と言い切る。なぜ叱ることが必要なのか。そう問うと、逆質問が飛んできた。

「まず、『叱る』の反対って、何だと思います?」

 えっと……「褒める」?

「違うんです。そもそも叱る目的は三つ。一つ目は『それは正しくないこと』と知らせ、改善を促すこと。『褒める』の目的は『それは正しいことだと伝え、続けるよう促すこと』で、この二つは本質的に同じなんです。『叱る』の反対は、『叱らない』。つまり叱らないことで、部下はそれが正しくないことだと気づけず、改善するきっかけを失います」

 二つ目は「集団の規律維持」。チームのメンバーの一人が理由もなくミーティングに遅れてきても上司が叱らなければ、他の社員たちは「それ、ありなの?」となってしまい、他にも守らない人が出てくるかもしれない。

「そうなるとチームの規律は崩壊ですよね。叱るべきことは叱らないと、集団の規律は維持できません」(濱田さん)

 もう一つ、「奮起を促す」もある。しかし、いまの時代はもう「効かなくなっているかも」と濱田さんは言う。

「叱られた後のリカバリーの経験もなく、ショックだけが残る場合もある。管理職が部下を正しい方向へ導く必須の仕事としては、最初の二つの『叱る』を意識するとよいかと思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年2月12日号より抜粋

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