写真はイメージです(gettyimages)
この記事の写真をすべて見る

 いまの若手は厳しく叱られる機会が減っている。暴言や暴力などパワハラに厳しい目が注がれ叱りにくくなったためだ。そんな時代でも必要な厳しさがある。叱る意義や目的をあらためて考えたい。AERA 2024年2月12日号より。

【画像】「叱る」目的とは?

*  *  *

「自分がお客さまの立場だったらどうか。ちゃんと考えて責任を果たしなさい」

 神奈川県の会社役員の男性(67)はある日、20代の社員をきつく叱った。営業先と約束した日時を守れなかったためだ。

 男性としては「彼ならちゃんとできたはずだ」という思いがあってこそ。しかし、ひどく落ち込む社員の姿を見て、複雑な思いもあったという。

「私も若い頃、上司に『何を考えてるんだ』などと厳しく叱られました。悔しかったけど、上に立ったときの心構えを学びました。いまの若い子たちは厳しく叱られる機会が減っている気がします。私には『もったいないな』と思えてなりません」

 部下への指導で、暴言や暴力などのパワハラ行為は論外だ。その理解が進む一方で、「褒めて育てる」が主流になり、叱るなどの「厳しい指導」をする機会が極めて少なくなっている。

叱られ慣れていない

 管理職研修の講師として「24年間、1万人以上の管理職の『ぼやき』を聞いてきた」というマネジメントコンサルタントの濱田秀彦さん(63)はこう話す。

「最近、皆さん共通して言うのが『部下を叱りにくくなった』ということ。要因はコンプライアンス研修で『パワハラは絶対にだめ』と会社から口を酸っぱくして言われること。もう一つは若い人たちが叱られ慣れていないこと。ラグビー部出身の大卒新入社員を、自分も体育会系出身の上司がそのノリで少し強く注意したら泣きだしてしまった、という例もあります」

次のページ