撮影:マキエマキ

「アウト×デラックス」で決断

 決まっていた仕事がリスケジュールされたり、キャンセルされ、少しずつ仕事が減っていった。思い切って制作会社の社長に理由を尋ねると――「実はね、マキエさんはNGって言われているんですよ」。

「最初はそんなに多くの人に作品を見られているとは思わなくて、実名で作品を発表したり、インタビューを受けていた。それでたぶん、企業の担当者が私の本名で検索したら、ホタテビキニ姿の写真が出てきて、この人はなんなんだ、と思ったのではないでしょうか」

 一方、30年ちかく雑誌や企業からの請負仕事をやってきて、限界を感じていたという。

「自撮りを始めたころ、50歳が見えてきて、60歳になってもこういう仕事しているのかなあ、私の人生、それでいいのだろうかって、疑問を感じていた」

 仕事が減る一方、17年から本格的に「昭和のエロ」路線で撮り始めるとTwitter(現・X)のフォロワー数はどんどん増えていった。

「でも、仕事がないと自撮りの作品をつくりに行くお金も出ないですから、細々と請負仕事も平行してやっていた」

 そして20年、独特の世界観を持って生きるこだわりの人をスタジオに招いて、マツコ・デラックスさんらと語るバラエティー番組「アウト×デラックス」(フジテレビ系)に出演した。

「テレビにあそこまで出られたらもう使えない、みたいなことを言われて。それまでお付き合いしてくださったところからも完全に切られた。それで、もうマキエマキとしてやっていこう、と決断した」

撮影:マキエマキ

こいつはやばいやつだ

 作品のロケーションは旧遊郭や温泉、ラブホテルのなどのほか、街なかや海、山で写したものもある。

 なかでも、目が引きつけられたのは雪山をバックに写した作品。ホタテビキニ姿のマキエさんとともに「(北アルプス)西穂高岳 独標」と書かれた標柱が写っている。

「他に登山者が2人くらいいらしたので、『山頂で写真を撮ってもいいですか』と聞いたら、『どうぞ、どうぞ』と。でも、そういう写真だとは思わないですよね(笑)。しかも、あそこは物陰がない。服を脱ぎ出したら、こいつはやばいやつだ、みたいな感じで目をそらされた。でも、こっちは真剣で」

 ガタガタと震えながらホタテビキニを身に着けた。寒さで指が動かず、背中のひもは同行した夫に結んでもらった。

「撮影する前、夫に画面に入ってもらい、立ち位置や構図、ピント、ストロボ使ったライティングを調整して、私と入れ替わります。モデルをやっていた経験があるので、ポージングには慣れています」

 カメラの連続撮影機能を使い、3秒ごとに50回、シャッターを切る。

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