病室からそのまま出勤
神山:林さんや工藤さんなど、都内だと障害がある子も保育園に当たり前に入っていてすごく驚きました。こちらでは、行政の側に「ハンディキャップがある子どもは母親が仕事を辞めて家庭で大切に見るべき」みたいな考えがあって、窓口の職員からも刷り込まれます。都内には、保育園申し込みの際に障害児だと選考の点数が加点され、入園しやすくする区もあると聞きました。地域で受けられるサービスや制度などに格差があるので、国で一律にしてもらえたらなと思います。
工藤:保活で思うことは、私の娘は本当に育ちがゆっくりで、無理に急かせて入園させてしまうと、自傷行為が悪化するなど強度行動障害を発症するリスクもあります。子どもの特性によっては乳幼児期に親子で療育を受けることも大事ですので、仕事を保障しながら親子で通園できる環境や、子どもの状態に応じて育休期間を柔軟に対応していただけるような制度も必要だと思います。そして、働くことが「母親のわがまま」のように言われることもありますが、いまは共働きしないと生活できない家庭も多く、障害児を育てるには予期せぬ出費も多い。自分の死後も子の生活を保障するためにも働き続けたいんです。
──こうした綱渡りの日々に、子どもや家族の入院や不登校などが重なると、追いつめられてしまいます。
三村:医療的ケア児の次男は2カ月に1度は約2、3週間入院します。休職前は勤務した後、まだ仕事が残っていても午後6時には学校を出て病院に直行し、妻と交代して病室に泊まり込み、朝そのまま学校へ、という生活を送っていました。そこに長男の不登校が加わって長男にも付き添いが必要になった。ぎりぎりで成り立っていた生活が崩れ、綱渡りどころか、綱がつながらなくなってしまって。教員のようにリモート勤務できず、柔軟な働き方ができない職種は両立が難しいと感じています。
子が小児がんで入院
林:私の一番の危機は、娘が1歳半で小児がんになったときでした。腫瘍が見つかってすぐに手術が必要ですと言われ、入院し、私が24時間付き添いました。退職も覚悟しましたが、仕事を辞めると上の子が保育園退園になってしまう。母親が入院の付き添いでいないのに、子どもの日中の居場所がなくなるってすごい矛盾してますよね。最終的には、介護休暇を取得し、離職も退園もせずに済みました。
出本:私は長男が学校に通えなくなって、使用できるありとあらゆる休暇を利用したけれど、もうどうにもならなくて、職場でも退職勧奨を受け、もうやめるしかない、と覚悟しました。でも長男から「お母さんに仕事を続けてほしい」と言われました。私は言語聴覚士として病院で働いているんですが、長男は宿題の作文にも私の仕事について書いてくれて。その頃、ようやくつながった不登校支援グループの方から「動物を飼えば1人でいられるかもしれない」とアドバイスをもらい、猫を2匹飼い始め、長男が1人でいられるようになったから今働けているんですけど、たまたまうまくいっただけ。一つでもピースが欠けたら仕事は続けられていないと思います。