神山:私も同じで、たまたま長男と次男の育休を続けて取得できたから、退職せずにすみました。もし、1年以内に育休復帰しなければならなかった場合、市役所への要望や交渉などをする余裕もなかったと思います。

障害児育児盛り込んだ制度

──運や環境に恵まれた一部の人だけでなく、働きたい人が働ける制度が必要です。

工藤:私のケースですが、障害や医療的ケアのある子を育てる社内の仲間たちと会をつくり、労働組合を通じて会社に訴え、障害児や医療的ケア児を育てる従業員が、子の年齢に関係なく何度でも時短勤務や勤務配慮を申請できる制度が創設されました。国も、当事者の声に耳を傾けてくれて、春の通常国会に障害児・医療的ケア児を育てながら働く親への配慮の視点を盛り込んだ「育児・介護休業法改正案」を提出する方針です。

──先日、朝日新聞でも報道されていましたが、JR東日本では今年4月から、障害児や医療的ケア児、難病の子どもを育てる社員の仕事と育児の両立を支援するため、子どもの年齢にかかわらず、短時間勤務制度などを利用できるようになるとのこと。また、電機メーカーの労働組合でつくる電機連合も、今年の春闘に障害児や医療的ケア児を育てる家族への支援制度を盛り込み、個別の事情に配慮した両立支援制度の門が少しずつ開き始めています。

障害児の選択肢少ない

――障害児の学びの場について、林さんのお子さんは特別支援学校に通っていますが、就学相談の際に悩んだりしましたか。

林:娘には、まずは身辺自立させたいという希望があったので、そのためには特別支援学校しかないと思い、迷いませんでした。ただ、特別支援学校だと地域との接点がなくなってしまうので、学童を利用させたいと思いました。いまは道を歩いていても声をかけてくれる子たちがいたり、落とし物をしたときに娘の名前を見て学童に届けてもらったりしたこともあって、地域に見守ってもらっているという心強さがあります。

工藤:日本では特別支援教育の選択肢が少なすぎると思います。健常児の場合、特に都市部では私立の学校が山のようにありますが、私立の特別支援学校は全国に10校程度。障害児こそ特性がさまざまなのに、選択肢が少なく、適応できない場合に代わりの育ちの場がなさすぎます。

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