「IT人気」は文系にも

 明治大学の山田浩哉・就職キャリア支援事務長は、人気の理由をこう分析する。

「一時期は納期に間に合わせるための深夜残業など厳しいイメージが強かったが、コロナ禍でIT系企業の在宅勤務率が高かったなど、イメージが変わってきている。IT業界の強い採用意欲もあり、柔軟な働き方を求める女性、未経験の文系でもSE職を考える学生は増えています」

AERA 2月5日号

 今回、01年から5年ごとに同じランキングのトップ10をピックアップしてみた。かつてのような人気はなくなった業種も見て取れる。

 たとえば、かつて日本経済を牽引した大手電機メーカーは、06年にはNEC(日本電気)、キヤノン、松下電器産業、富士通が10位以内にランクインしているが、今回のランキングでは、100位以内にランクインした大手電機メーカーはゲーム事業が好調なソニー、生活用品全般を手がけるアイリスオーヤマを除けば三菱電機のみだ。

 また、メガバンクは11年、16年のランキングでは2行が10位以内にランクインしているが、前回ランキングでは3行とも100位以下にランクダウン。今回は三菱UFJ銀行だけが100位以内(84位)となった。ピーク時の16年ごろは3行あわせて5千人強の新卒を採用していたが、いまはあわせて千人程度と大きく採用数を減らしていることが影響しているとみられる。

AERA 2月5日号

 ただ、学生にとって身近な食品メーカーや、コロナ禍から復活しつつある航空・旅行業界などは、昔もいまも変わらず人気が高い。今回上位の伊藤忠商事や大手出版社も伝統ある企業で、ここ20年でGAFAが遂げた急成長のような大きな変化は見られないともいえる。常見さんは「10年、20年と顔ぶれがあまり変わっていない。これは日本の課題かもしれない」と語る。

地方、中小は人手不足

 インターンシップ(就業体験)が25年卒から採用と直結できるようになり就活が早期化したこともあって、人材確保の競争は激化している。明治大学の山田さんは、「重厚長大産業の中小企業や、地方企業が特に困っているようです」と言う。

「23年12月の段階でも、24年卒生について企業から『まだ予定の人数を採りきれていない』という相談をよく受けています」

 コンテンツ業界などは特にそうだが、ランキング上位の企業が多くの新卒を採用するとは限らない。一方で知名度は高くないが人がほしい企業は増えている。売り手市場とはいえ、就活生は人気にとらわれず幅広い企業をチェックする必要がある。(あさがくナビ編集長・福井洋平)

AERA 2024年2月5日号より抜粋

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