得度のためにインドで髪を剃る小野さん
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 IT起業家・投資家として活躍していた小野裕史さんは、2022年秋、48歳の時、手にした地位と財産とモノを捨て去った。そしてインドで得度して仏門をくぐり、小野龍光と名乗る「何も持たない」身になった。SNSのフォロワーが何人だとか動画の再生回数がいくらだとか、目先の数字を追い求めがちなご時世。われわれネットメディアもまったく例外ではない。数字や成功を追い求めていた過去を「前世」と表現する小野さんの目には、われわれメディアや、数字に“取りつかれた”人々はどんな風に映っているのか。

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 東大大学院を修了後にIT業界に飛び込んだ小野さん。地域の情報サイト「ジモティー」や「グルーポン」の立ち上げに関わるなど起業家、投資家として活躍し、出家前は年商100億円の企業のCEOだった。

 はた目には成功者だった小野さんだが、2008年に投資会社を立ち上げて以降、徐々に「自分の内なるものと、外にあるものへの違和感」が膨らんでいったという。

 ビジネスパーソンとして成功したい、称賛されたいという欲にかられていた小野さん。それゆえ、企業に投資し、株式の時価総額が上がった時は、脳が快楽物質のドーパミンで満たされるような高揚感に包まれた。

 一方で、時価総額という数字を追い求める作業には、永遠にゴールがない。どうなれば成功したと言えるのか、その答えもない。そのことが分かっている自分、こんなゲームに意味はないと分かっている自分がいながら、ドーパミンの快楽を求めるかのように数字を追ってしまっていた。

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「前世」では数字を追いかけた