「国際化」で貢献したい
――そこから着々と研究業績を上げ、一方で大学全体の研究運営や日本の科学技術政策づくりにも深くコミットするようになった。2022年には外務大臣の次席科学技術顧問に就任されたんですね。
ええ、科学技術外交は今まで以上にすごく重要になると思います。この職についてから、今まであまり行く機会がなかったアセアン諸国とかアフリカとかにも行くようになりました。
日本はこれまで「国際」っていうことが後回しだった気がするんです。まず日本で何かやります、そのあとに海外展開しますみたいなツーステップでなく、最初からグローバル市場で考えないとこれからは立ち行かないと思う。そのときに大事なのは、オーストラリアやニュージーランドも含めたアジアパシフィックでコミュニティーをつくっていくこと。いつまでも欧米が決めた研究のフロンティアに乗っかるか乗っからないかという勝負じゃなくて、日本がリードするアジアパシフィック圏からの研究発信が必要かなと思います。
顧問の仕事には明確なミッションがなく、これは海外の科学顧問に聞いても同じような状況で、皆さん、自分の専門性を生かしながら国にとって必要と思うアドバイスをしている。私は国際化というところで、何か貢献したいと思っています。
もちろん、数学の研究もやりたい。数学って、設定を考えるところが一番難しいんですよ。設定ができれば、あとはスルスルいく。設定を考えるには、何にも邪魔されずにそれに集中する時間が必要です。今でも、1カ月は難しくても1週間ぐらいなら誰にも会わずに研究することができている。それをやっている分には私は幸せです。