昨年、明治と日本気象協会が実施した「災害時における授乳環境の整備、および備蓄状況に関する実態調査(全国自治体備蓄状況調査)」によると、液体ミルクを備蓄する全国の自治体は、20年の調査では12.3%だったが、23年は47.5%と大きく増加した。
それでも液体ミルクの使用量は、諸外国と比べると少ないままだ。日本市場における乳児用ミルクの割合は、粉ミルクが98%を占めるのに対して、液体ミルクは2%でしかない(容量ベース、22年のテトラパック調べ)。しかし、フィンランドは液体ミルクが92%、イタリアやベトナムは40%ほどになる。トルコでは28%。モロッコでも16%だ。
たしかに粉ミルクより液体ミルクのほうが製造工程が複雑なうえ、水分の量だけ重量が増して輸送コストがかかる。比較的安価のため、多くの国で粉ミルクが主流ではあるが、日本で使われる液体ミルクの少なさは際立っている。それはなぜなのか。
江崎グリコの横山さんは、
「熊本地震をきっかけに知られた液体ミルクということで、防災備蓄であったり、お出かけのときに使うという認識がお客様に強くて、日常的な育児で使う方がまだまだ少ないという状況です」
と説明する。
昨年、0歳から1歳半の幼児を持つ親1500人を対象にした明治の調査によると、同社のミルクを使っている割合「現在使用率」は粉ミルクが19%、液体ミルクは16%とそれほど大きな差はなかった。ところがメインで使用している割合「主購入率」は粉ミルクが15%、液体ミルクは1%と、大きく異なっていた。
「つまり、液体ミルクを使用されている方はかなり多いのですが、利用される頻度が少ない、というのが今の液体ミルクの実態です」
と明治の乳幼児・フェムニケアマーケティング部の江原秀晃さんは言う。