同社の液体ミルクの用途は、「お出かけ」が93%、「防災備蓄」が81%、「日常の利用」が13%、「深夜の授乳」が9%だった。

「ただ、液体ミルクを発売して2年ほどは『備蓄』がトップでしたが、年々、それ以外の用途の数字が上がっています」(江原さん)

 普段から液体ミルクを飲み慣れていない赤ちゃんだと、いざ災害が発生した際に嫌がって飲んでくれない可能性があるという。

「そうなってしまうと困るので、例えば1カ月に1回、液体ミルクを飲む機会をつくって練習しておくことが大切だと思います。それによって安心度が増すでしょう」
 

廃棄ロスをなくす工夫

 一方、全国自治体備蓄状況調査によると、液体ミルクを備蓄する自治体は増えているが、まだ半数以上の自治体は備蓄していない。その理由として最も多いのが、「賞味期限などが短く廃棄ロスの懸念がある」(75.2%)だ。

 全国でいち早く、19年夏に液体ミルクの備蓄を始めた自治体の一つが東京都文京区。災害時に「妊産婦・乳児救護所」を開設する日本女子大など、4つの大学で保管している。

「さらに区立保育園にも備蓄しています。今、一番賞味期限が長い製品は1年6カ月ですが、それを購入して、期限が近づくと保育園や小中学校の給食用として調理加工して利用し、そのぶんを買い足しています」(文京区危機管理室防災課)

 江東区では、液体ミルクの廃棄ロスを解消するめどがついたことから、来月から液体ミルクの備蓄を開始する。

「最初の12カ月間は区で備蓄して、それを過ぎたものは保育園等で活用いたします」(江東区防災課)

 内閣府と厚生労働省は、賞味期限が間近になった液体ミルクを防災訓練や啓発活動で、正しい使用方法を説明したうえで活用することも推奨している。
 

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液体ミルクならではの課題も