自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件は政界を揺るがし、有権者の政治不信が高まっている。政治改革は進むのか。久米晃・自民党元事務局長に聞いた。
【写真】「自民党は砂漠のよう」と語る久米晃・自民党元事務局長
――自民党の「政治刷新本部」(本部長・岸田文雄総裁)が1月25日、政治改革の「中間とりまとめ」を決定しました。
これから国会で、与野党の提案をたたき台に議論が進められることになりますが、ポイントはカネの収支を明示すること、35年前の政治改革大綱の原点に立ち返ること、です。
――岸田さんは1週間前の18日夜、「宏池政策研究会」(岸田派、46人)の「解散を検討している」といきなり言い出しました。
あの「派閥解散」は唐突でした。最初聞いたときは私もへえっと思ったけど、有権者はあまり反応せず、自民党内に反発を招いただけに終わった。直後の朝日新聞調査で内閣支持率は最低の23%で変化なし、各社とも支持率はほとんど変わらなかった。岸田さんも誤算だったんじゃないか。
よく考えると、何で派閥の会長を辞めた岸田さんが、派閥の解消を言えるんですか。しかも当時は、党の刷新本部で議論している最中だった。その結論をミスリードした。
――どこでずれたのか。
有権者が望んでいるのは派閥の解消じゃなくて、おカネの話でしょ。人が3人集まればグループはできる。どこの会社でもグループはできるが、限度、節度がある。その節度を失ったところに今回の問題があった。
裏金の問題は、35年前のリクルート事件後に作った「政治改革大綱」を守っていれば起こり得なかったことです。これが、だんだんと形骸化してきた。
あの安倍(晋三)さんでも清和会を離脱していた。岸田さんは首相になっても、派閥を抜けなかった。この問題が起きた後で会長を辞めた。その後で「派閥解散します」と言っても説得力はない。
――一方で、現実の派閥の実態を見ると、安倍派は分裂直前、「派閥存続」を主張する麻生派には後継者が見えない。
安倍派としてまとまることはもはやありません。どこの組織でも見られることですが、トップが代われば分裂が起こりやすい。強いリーダーのあとは、なおさらです。5人組でもまとまらなかったわけだから、分解しかない。3分裂かな。
世代交代、派閥再編は早まる。統制がとれない戦になるのではないか。
麻生、茂木両派が仮に「偽装解散」しても、そのとたんに元に戻れなくなりますよ。だって麻生(太郎)さんとこは、ナンバー2が見当たらない。茂木派も、店を閉めたとたんに、おそらく参院は別グループを作るだろうし。軸になる人間がいないから再結集は難しくなるだろう。かろうじて宏池会だけは、形の上での後継者とされる林芳正官房長官がいて、何人か固まりが残るかもしれないが、基本的に分解でしょう。
人材が出てこない。自民党は砂漠のようです。