例えば、日本メーカーが市場の8割を押さえていたタイでは、新車販売に占めるEV比率が23年11月になんと14.8%にまで急上昇した。日本はいまだに2%程度だから問題外だとして、同月に中国でも2割台、ドイツや英国は2割未満であることから見ると、この数字がいかに高いかがわかる。
タイ市場では、中国製EVが圧倒的人気で、23年11月の車種別ランキングではトップ10のうち9つが中国車だ。テスラのモデルYは8位だったが、これはテスラ上海工場製なので、結局は全てが中国からの輸入車だということになる。
中国のEVメーカーは、国内や欧州などでの逆風を新興国への輸出で少しでも和らげようと必死になっているので、今よりも激しい攻勢に出ることが予想される。さらに、中国メーカーはタイでの生産の準備を進めていて、日本メーカーの地位を脅かし始めた。
タイ同様日本車が9割を占めるインドネシアでも、中韓のメーカーがEVで日本ブランドに挑戦する戦略で浸透を図っている。インドネシアは、電池材料のニッケルの資源が豊富なので車載用電池産業の振興も図る方針で、ますますEV化に熱を入れている。
これに呼応する形で韓国の現代自動車はすでにインドネシア国内でEV生産を開始している。中国も長城汽車など数社が現地生産を計画し、輸出も増やす計画だ。
もちろんEV化比率はまだごく僅かだが、インドネシアは東南アジア最大の自動車市場であり、日本にとってはドル箱である。そこでブランド力を失えば、その損失は非常に大きい。
新車販売台数で日本を抜き世界3位に浮上したインドでもEV化熱が高まっている。まだその動きは始まったばかりだが、モディ首相が直接テスラのイーロン・マスクCEOと会談するなど、本気度をうかがわせる。
インドといえば、日本のスズキが子会社を通じ、乗用車市場で4割のシェアを持つ。テスラを迎え撃つには、EVで戦うことは避けられない。そこで、スズキは、インドをEVの製造拠点とする構えだが、まだ戦えるEVはない。