今年11月の米国大統領選に向けた共和党候補者の指名争いの初戦となるアイオワ州の党員集会が1月15日に開かれた。その結果は、トランプ前大統領が5割を超える得票で圧勝。トランプ氏が共和党の大統領候補となる可能性が高まったと言わざるを得ない。
トランプ氏が大統領に選ばれれば、来年以降の世界の政治経済にとって、最大の波乱要因となることが懸念されるが、トランプ氏の勝利を密かに喜ぶ人たちもいる。その要因は様々だが、その一つに、トランプ氏の環境・エネルギー政策がある。
彼は、そもそも地球温暖化そのものを否定している。したがって、脱炭素には反対で、石油・ガス・石炭いずれについてもその生産と消費を減らすどころか、「掘って掘って掘りまくれ(drill, baby, drill)」と叫んでいる。脱炭素に力を入れるバイデン大統領とは正反対で、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)などにシフトしつつある産業界は完全にハシゴを外されることになる。
一方、そうなることで得をする人たちが日本にもいる。その代表格が、EVで米中韓のメーカーに完全に後れをとった日本の自動車メーカーだ。
実は、最近、世界のEV普及には若干の向かい風が吹き始めていた。
例えば、EVで世界の先頭を走る中国では、EVへの補助金が2022年末に打ち切られたが(取得税の優遇措置は継続)、それに加えて景気低迷で個人消費が停滞している。そのため、EVの増加は続いているものの一頃より勢いが落ちている。
それもあって、中国メーカーは急速に海外へのEV輸出に注力し始めた。中国政府からの様々な補助金を得ている中国メーカーは、低価格での輸出攻勢をかけている。特にEVシフトで中国を追う欧州では、現地の自動車メーカーによるEV販売のシェアを大きく侵食し始めた。