ちなみに、ガソリン車を含めたブランド別ランキングでも、日本経済新聞によれば、23年上半期に前年1位のトヨタのカローラを抜き、テスラのモデルYが20万台以上の差をつけていきなりトップに躍り出ている。テスラのモデル3も9位に入り、EV市場は小さなマーケットだという時代が終わりを告げたことがわかる。

 すでに中国では、「トヨタはEVを作れない」あるいは、良くても「トヨタのEVはテスラや中国車に負ける」という評価が消費者の間で完全に定着しているのを日本のテレビでも報じていたが、米国でも、テスラのブランド力がトヨタのそれを上回ってしまったようだ。

 このように非常に苦しい位置に立つ日本メーカーだからこそ、前述のような世界でのEV化の減速は願ってもないことだ。その上にトランプ大統領誕生の可能性が高まっているということであれば、状況はますます我が方に味方しているという錯覚に囚われるかもしれない。

 トヨタなどは、つい最近まで東南アジアでのEV普及はまだ先だと見ていた。脱炭素の主役は、当分ハイブリッド車(HV)が担い、そこで日本は十分儲けられるので、慌ててEVシフトを進めるのは得策ではないという判断だ。現に、トヨタのHVの世界シェアは6割を占め、今後しばらくはさらに需要が増えると予想されている。23年のトヨタの世界販売は、4年連続の1位になったと推定され、その意味で、トヨタの戦略は成功しているかのように見える。これから本格的なEV化に合わせてその資金力も使い一気にEV化で勝負に出るというストーリーはつい1年前までなら、信じる人が多かったかもしれない。

 そんな中で、欧米中でEV化の速度が落ち、その先にトランプ政権の誕生が見えてきたとなれば、やはり自分たちの見通しは正しかったと思いたくなるだろう。

 しかし、これで楽観して良いというほど世の中は甘くない。なぜなら、トヨタなどが、EV化はかなり遅れると読んでいたアジア市場で、予想外のことが起きているからだ。

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中国メーカーが日本メーカーの地位を脅かし始めた