2024年の大河ドラマは、吉高由里子演じる紫式部(まひろ)が主人公の「光る君へ」。紫式部と藤原道長の関係を軸に、1000年の時を超えて読み継がれるベストセラーとなった『源氏物語』はいかにして生み出されたのかを描く。
第1話でも第2話でも随所に描かれたのは、まひろ一家の「下級貴族」ぶり。まひろの父・藤原為時はなかなか官職を得られず、当時権勢をふるった藤原兼家の力で東宮(のちの花山天皇)の教育係になると、兼家の意には一切逆らえなくなる。
主人公たちが身を置いた平安貴族の世界は、官位によるヒエラルキーが定着した現代以上の格差社会。『出来事と文化が同時にわかる 平安時代』(監修 伊藤賀一/編集 かみゆ歴史編集部)から、貴族と庶民の実態をリポートしたい。
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現代の会社に役職や等級があるように、貴族たちの世界にもランクがあり、上級貴族から下級貴族までのヒエラルキーが存在した。これを「官位」という。
平安時代初期、朝廷は貴族を一位から初位までの9つに分け、その官位に「正(しょう)」「従(じゅ)」「上(じょう)」「下(げ)」を付けることで細分化した。「正一位(しょういちい)」「正四位上(しょうしいのじょう)」といった具合である。結果的に官位の数は30階級にまで膨れ上がった。
この中で、正確な意味での貴族は「正一位」から「従五位下(じゅごいのげ)」までの14階層のみに限られる。天皇が居住する清涼殿(せいりょうでん)に昇り、天皇にお目通りできるのは、一位から三位までの公卿(くぎょう)と呼ばれる上級貴族と、四位、五位の中でも昇殿を許された「殿上人(てんじょうびと)」のみに限られていた。
しかも、「蔭位(おんい)の制」という制度により、子どもは親の官位に応じた官位を与えられ、子孫代々待遇面でも優遇された。平安貴族の世界は、格差「固定」社会だったのだ。