元日の家族団らんを容赦なく襲った能登半島地震。東日本大震災以降の報道や対策の 議論は太平洋岸が中心だったが、日本海側の地震リスクが低いわけではないという。AERA 2024年1月22日号より。
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元日の夕刻に能登半島を襲った地震は、石川県志賀町で震度7、七尾市、輪島市、珠洲市、穴水町で震度6強を観測した。確認された死者は9日までに200人を超え、家屋被害の全体像を把握できるのはかなり先になりそうだ。災害支援団体「災害救援レスキューアシスト」代表の中島武志さんは言う。
「私が活動している珠洲市の北側の地区では、目算ですが揺れで倒壊したとみられる家が全体の3~4割、全壊と判定されるだろう家は7割程度にものぼります。地震被害としては経験のないレベルで、支援活動も年単位になるでしょう」
地震とは、地球の表面を覆うプレートにたまったひずみが限界に達し、岩石が大きくずれ動く現象だ。日本付近での大地震は大まかに、海のプレート境界付近で起きる「海溝型地震」と、陸のプレート内部がずれ動く「内陸の地震」に分けられる。
今回の能登半島地震は、日本海沿岸の海陸境界で起きた「内陸の地震」だ。能登半島の沿岸は、海底に活断層があることが知られている。活断層とは過去に地震によって繰り返しずれ動いた場所で、将来も活動すると考えられる断層のこと。地表や海底に特徴的な変形が認められる。活断層による地震は海溝型地震と比べて震源が浅く、局所的に激しい揺れになる。
実情はまだわからない
今回の地震の規模を示すマグニチュード(M)は7.6。内陸の地震としては熊本地震や兵庫県南部地震(ともにM7.3)を上回り、過去最大規模だった。
今回の震源域に活断層があることは、従来知られていた。東日本大震災を受けて2013年から14年にかけて開かれた国土交通省の「日本海における大規模地震に関する調査検討会」では、津波を伴った大地震を起こしうる断層モデルとして今回の地震とほぼ同じ震源域を想定し、最大でM7.6の地震が起こる可能性があるとしている。今回の地震の要因となったのがその断層だったのか、あるいは未知の断層だったのかは今のところはっきりしないものの、地域の地震リスクとしては「想定外」ではなかったという。東京大学名誉教授で、政府の地震調査委員会委員長を務める平田直(なおし)さんはこう説明する。