さて、日本は国土のどこで大地震が起こっても不思議ではないとされる地震大国だ。ただ、東日本大震災以降の報道や対策の議論は、特に確率が高い南海トラフ地震や首都直下地震、日本海溝・千島海溝地震など太平洋岸が中心だった。それでも、日本海側の地震リスクが低いわけではないという。
「地震の巣」多数存在
東京大学地震研究所に事務局を置いた文部科学省「日本海地震・津波調査プロジェクト」では、2013年から8年かけて日本海で起こり得る地震や津波を調査した。その結果、日本海側で津波を引き起こす可能性がある断層が合わせて185見つかったという。陸と海にまたがる断層や沿岸との境界にある断層では津波が到達するまでの時間が極めて短い。また、地震の揺れそのものが大きくなるエリアも見つかっている。プロジェクトで強震動予測を担った京都大学防災研究所の岩田知孝教授(強震動地震学)は言う。
「日本海側の地震のシミュレーションでは、秋田県や新潟県などで最大震度7になる恐れがある断層が見つかっています。地震による揺れの強さには断層の規模や位置に加え、地盤の揺れやすさが関係します。能登半島もそうですが、堆積物によってできた沿岸の平地は地盤が軟らかくて弱く、揺れが大きくなりやすい。しかし、様々な社会的な理由から山奥よりもそうした沿岸部に集落は集中しています」
活断層による地震は発生周期が数千年から数万年と長く、海底断層の場合は過去の痕跡を探るのも簡単ではない。直近に大地震が起きる可能性は相対的に低くなるが、日本海側にも「地震の巣」ともいえる活断層が多数存在するのだ。
「日本海側は太平洋側のプレート境界で起きる地震と比べれば発生確率が低く、強い揺れが予想されるエリアも広くないため、地震の予測地図などを見ても目立ちません。それでも、全国どこにでも地震のリスクはあります。自分が住む地域の特徴や地形的な成り立ち、揺れやすさなどは知っておいてほしいです」(岩田教授)
(編集部・川口穣)
※AERA 2024年1月22日号